ビリヤードのショットの基本として真っすぐ玉を走らせるには?というテーマで考えてみましょう。
丸い玉が転がるのだからまっすぐ走るのは当然と思うかもしれませんが、侮るなかれ、ビリヤードの手玉は結構わがままなのです。
なかなか思った方にまっすぐ転がってくれないことがよくあります。
玉が曲がる仕組みをよく理解して、まっすぐ走らせるために必要な要素を学んでいきましょう。
1.ビリヤードの玉は基本真っすぐ走るもの
テーブルのラッシャや玉自身に摩擦のいっさいない理想的な空間を想像してみてください。
昔物理の授業で教わった、「慣性の法則」というのを覚えていますか?
覚えているわけないですね。(笑)
「力を加えられて動き出した物体は、他から力が加わらない限り一定の速度でまっすぐに動き続ける」
こんな感じ?(笑)
なので、理想的な空間で撞かれた手玉は一旦タップから離れると他から力が加わらない限りまっすぐ動き続けます。
そうなんです。
まっすぐ手玉を走らせるのは摩擦のない理想的な空間の中ではとても簡単なことであり、当然のことなのです。
2.なんで手玉はまっすぐ走らないのか
では、なんで手玉はまっすぐ走らないのでしょうか?
賢い読者の方はもうおわかりかと思いますが、ビリヤードは理想的な空間で行われる競技ではないからです。
では、理想的な空間と実際のビリヤードのテーブル上の玉とは何が違うのでしょう?
その答えは、まず全ての物体に摩擦力と呼ばれる力が働くことがひとつです。
もうひとつは、手玉もタップも曲面(球面)でできていて、接する場所でキューの向きとは違う方向に力がかかることです。
1.摩擦による曲がり
手玉とラッシャ、手玉とタップ、それぞれに触れ合う部分にはお互いに摩擦力がかかります。
静止摩擦力、動摩擦力とか言うと思いますが、細かい話は物理の教科書を引っ張り出してくるとして、これらの摩擦力を、単に摩擦と呼ぶことにします。
手玉がタップと衝突する瞬間がインパクトです。
インパクトしたときキューの方向が上下に斜めに傾いていたとしましょう。
そして、撞点が手玉の中心線から左右のどちらかにわずかにズレたとしましょう。
このとき手玉には下向きの力が加わりながら進む方向に対して横回転しながら動きだします。
ジャイロのように横回転しているような図が頭に浮かびますでしょうか?
このとき、手玉が進みながら回転の方向に曲がっていくことになります。
ボーリングの玉がレーンの上を転がっていきカーブがかかっていくのと同じ理屈です。
ただ、ビリヤードの玉の場合はボーリングの玉と床の関係よりも摩擦が大きいので、撞かれた直後から大きな摩擦力が加わるためツルツル転がらず、撞かれた直後に瞬間的にカーブがかかりやすくなります。
このため、左右に少しズレたような場合に横回転によってカーブが出て曲がります。
2.曲面同士が衝突することによる曲がり
「曲がり」という言葉が適当かどうか悩ましいですが、タップの曲面と手玉の表面の曲面が衝突するとき、例えば左右に少しズレた撞点を撞いたときのことを想像してみてください。
仮に少し右を撞いたとしましょう。
このとき、タップと手玉が接触する瞬間を上から見てみましょう。
すると、タップの左側が手玉の右側と接しているのがわかると思います。
このままインパクトしたとき、手玉がキューの方向とは若干異なる方向に進んでいくのが想像できますでしょうか?
手玉に小さなビー玉が少し右側に当たったようなイメージでもよいです。
手玉の輪郭が球面であることは自明の理ですが、タップも丸みを持った球面の一部なので、手玉を撞くときは、球面同士が衝突していることになります。
その球面同士の接点が少し右にズレるので、右側を撞かれた手玉はキューの方向に比べて少し左側に進もうとします。
このためにキューの方向と同じ方向にまっすぐ進まない現象が出ます。
ビリヤードにおいて、手玉のど真ん中を撞くことは利き目などの影響で意外に難しいことですし、そもそもど真ん中というのは1点しかないものなので、多少なりとも左右どちらかにズレるのが常です。
このことを知った上で、手玉を進めたい方向とは少し異なる方向にキューを構えることを、「方向の違いを見越す」という意味で「ミコシ」と呼びます。
ミコシという言葉は今後よく出てくると思いますので、覚えておくと仲間との会話もスムーズに進むと思いますので、この機会に頭の中にしまっておいてください。
また、最近のキューはこのミコシが極力出ないように手玉とのインパクトのときのシャフトのしなり具合でミコシを吸収してしまうような「ハイテクシャフト」と呼ばれるものも増えてきています。
キューの特性でミコシの量も変わりますので、キュー購入の際はハイテクシャフトという言葉も覚えておくとよいでしょう。
少し横道に逸れましたが、丸みのあるタップで手玉の球面を撞くと左右のズレによってミコシが生じて狙った線上に手玉が走らないことがあると覚えておきましょう。
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