ビリヤードのポジション・テクニックのひとつとして順引きのテクニックについて説明します。
1.言葉の定義
ご説明にあたって、いくつか必要になる言葉の意味を説明します。
1.順逆の考え方
そもそも、順ヒネリや逆ヒネリが何かを定義しておく必要があります。
なぜかと言いますと、この順逆の考え方はポケットビリヤードとキャロムビリヤードで定義が違うからです。
ポケットビリヤードで順ヒネリは以下のように説明できます。
右フリ(ゴルフで言う右ドッグレッグ)で、ポケット、的玉、手玉が並んでいるような場合に手玉の左側をヒネって横回転をつけながら撞くこと。
左フリ(ゴルフで言う左ドッグレッグ)で、ポケット、的玉、手玉が並んでいるような場合に手玉の右側をヒネって横回転をつけながら撞くこと。
同様に逆ヒネリは以下のように説明できます。
右フリ(ゴルフで言う右ドッグレッグ)で、ポケット、的玉、手玉が並んでいるような場合に手玉の右側をヒネって横回転をつけながら撞くこと。
左フリ(ゴルフで言う左ドッグレッグ)で、ポケット、的玉、手玉が並んでいるような場合に手玉の左側をヒネって横回転をつけながら撞くこと。
言葉で書くと難しいですがポケットビリヤードでは「フリ」に対して順か逆かを決めています。
一方テーブルにポケットのないキャロムビリヤードは、順逆ヒネリを以下のように定義しています。
順ヒネリは第一クッションに対する入射角よりも反射角のほうが角度が広がるようにヒネって撞くこと。
逆ヒネリは第一クッションに対する入射角よりも反射角のほうが角度が狭まるようにヒネって撞くこと。
こちらも言葉で書くと難しいですが、キャロムビリヤードでは「クッション」に対して順か逆かを決めています。
今後のご説明では考え方を統一するために、キャロムビリヤードにおける順と逆の考え方を採用することにします。
あれ?なんでキャロム基準なの?
と思った人はセンスが良いと思いますが、ポジションプレーを考える際にクッションの反射を使ってポジションすることが重要になってきます。
玉をクッションに反射させて転がす。
クッションからの角度を調整する。
こうした意味で、キャロムビリヤードの考え方を採用するほうが考え方が自然です。
2.順ヒネリ
クッションに対して順回転となるヒネリが順ヒネリです。
この順ヒネリで撞かれた手玉がクッションに反射する際にどのような挙動になるかを考えてみましょう。
1.入射角と反射角
先にも説明しました通りですが、順ヒネリで撞かれた手玉はクッションに入射した際入射角より反射角のほうが広くなります。
2.入射後のスピード
入射後のスピードに関しては、玉の回転の分が上乗せされて入射時のスピードより速くなります。
速くなるというと本当は語弊がありますが、今はイメージとしてそうとらえておいてもらってもかまわないです。
3.逆ヒネリ
クッションに対して逆回転となるヒネリが逆ヒネリです。
この逆ヒネリで撞かれた手玉がクッションに反射する際にどのような挙動になるかを考えてみましょう。
1.入射角と反射角
先にも説明しました通りですが、逆ヒネリで撞かれた手玉はクッションに入射した際入射角より反射角のほうが狭くなります。
場合によってはマイナスの角度に反射する場合もあります。
2.入射後のスピード
入射後のスピードに関しては、玉の回転の分が差し引かれて入射時のスピードより遅くなります。
遅くなるというと本当は語弊がありますが、今はイメージとしてそうとらえておいてもらってもかまわないです。
4.押し
理想的な摩擦のまったく無い空間であれば手玉は的玉に当たった後、玉と玉の接線方向に一直線に弾けていきます。
分離角は的玉が飛ぶ方向に垂直な接線方向ということです。
実際には物体と物体が触れ合う部分には全て摩擦が生じますので、手玉が回転しながらラッシャの上を転がっているので摩擦によって手玉の動きは接線方向からそれて弧を描いて動いていきます。
物理の授業で教わったことがあるかもしれませんが、摩擦によって生じる弧の形は2次曲線(放物線)の半分になります。
厳密に言うと2次曲線とは違いますが、今は2次曲線と覚えておいても差し支えありません。
平たく言うと「手玉は的玉に当たった後カーブしている」と覚えておいても良いかもしれません。
押しは、手玉の上を撞いて前進回転を与えながら手玉を撞くことを言いますが、押しで撞かれた手玉は的玉に当たった後接線方向より前に向かってカーブしていきます。
5.引き
引きは、手玉の下を撞いて後進回転を与えながら手玉を撞くことを言いますが、引きで撞かれた手玉は的玉に当たった後接線方向より後ろ向かってカーブしていきます。
2.順引きが有効に利用できる場面
順引きは、上記の順ヒネリと引きを同時に使うテクニックの一つです。
手玉の斜め下を撞きます。
特性として、角度が広くなる、スピードが遅い、後ろに向かってカーブする性質を持っています。
この特性をうまく使えるシチュエーションのひとつに、「手前のクッションに戻しながら距離をできるだけ稼ぐポジション」があります。
次の配置を有利に進めるために「手前のクッションに反射してくれたら良いのに」と思うような場面が頻繁に出てきます。
転がり始めのラッシャとの摩擦が大きい引き回転とクッションからのスピードが速くなる順引きは、比較的近い距離の手玉と的玉で、手前のクッションを使ってできるだけ距離を稼ぎたい配置に最適といえます。
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