合気道の稽古は一見すると本当に実現するのか不安になる方が多いそうです。
もし実戦しなければならない時に相手は型通りには動かないでしょう。
しかし、合気道の稽古というのは型を通じて力の流れを理解する事にあります。
決められた型が出来るから偉い・強い、などといった概念は全くなく、型を通じて力の流れを学び続ける事が大事です。
技の稽古の成り立ちは、合気道の歴史の記事を読んでいただくともっと興味が出るかもしれません。
今回は合気道の相半身片手取り一教(表)について紹介していきます。
1. 相半身片手取り一教(表)
相半身片手取り一教(表)とは、相半身と呼ばれる相手と自分が逆写しになった姿勢で片手を取った状態から始まります。
逆写しの姿勢とは、自分の半身が右手前右足前の際に、相手も右手前右足前になっている姿勢です。
その状態から前に出している手を相手に掴んでもらいます。
これで技の準備が整いました。
逃げようとした際に手を掴まれたとしたら現実にも起こる事かもしれません。
ここから、技に入ります。
一教とは文字のごとく最初の教えとなる程に重要な技です。
動作の理解が重要です。
合気道の相半身片手取り一教(表)で意識してもらいたい事は、手を上に上げて下に降ろす動作だという事です。
剣道の素振りをした事がある方なら理解しやすいかもしれません。
素振りをした事がない人は丸いボールを両手で持ち、ボールを頭の上まで持ち上げましょう。
その後にボールをお腹の位置にまで戻します。
一連の動作の中で力は込めないで下さい。
手の動きはこれでほぼ完了します。
筋力は必要ありません。
力で技をかけ続けていると、より大きな力を持つ人に勝つ事は出来なくなるでしょう。
相半身片手取り一教(表)では、片手を取られた状態でこの手を上げて降ろす動作をします。
相半身片手取りの状態からその動作をするのですが、コツを掴むまでは難しいはずです。
手首を掴まれている時に、手の力でそれを上に上げるのは理に適わないからです。
ではどうするのか?
そこで足を使い入身をします。
転換でも構いません。
足を相手の方向に出していきましょう。
こちらが手を力ませていなければ相手は肩が上がり、肘が外側に向いていきます。
自然に前に進む力ですが、足と手ではほぼ確実に足が勝つからです。
足の力は手の4倍以上と言われています。
前に進む力で相手が崩れ始めたら、前述した手の動きを行いましょう。
そうすると相手はさらに体制が崩れ、二の腕の裏が見えます。
その状態で前に歩きながらそこに手を添えてさらに前に歩いていけば、自然と相手は倒れます。
相手を抑え込むために、姿勢を崩し倒れていく相手に合わせて自身も座る動作を行います。
これでほぼ完了ですが、ここから非常に重要な「残心」を行う必要があります。
2. 相半身片手取り一教(表)の残心
残心とは技が決まった後も気を緩めない事、反撃の隙を与えない様にする心構えから生まれる動作です。
合気道の相半身片手取り一教(表)の残心では、倒れた相手の腕を押さえ込みます。
相手の手の平が天井を向いている状態になっているはずなので、手首の元と肘付近を掴みます。
そこで、自身は跪坐の姿勢となり抑え込むのですが、ここで重要な事が二つあります。
一つは力では抑え込まないで下さい、という事です。
手をピンと伸ばして相手に添えましょう。
相手が上に起き上がりたい時に、この抑え方をされるとほぼ脱出不可能となります。
というのも、これで起き上がれる人というのは抑え込んだ相手の肩関節を上に上げる力だけで外せるレベルの筋力があるという事だからです。
そんな人はこの世にほぼいません。
もう一つの重要な事は、跪坐の足の位置です。
相手の肋骨付近に膝を当てておく位置取りをして下さい。
この状態では、相手の手は裏返った状態で肩より上側に位置します。
この状態になれば相手は手を裏返したり前に這って姿勢を戻したりも出来ません。
暴れるようなら膝で肋骨を押し、痛みを与える事も出来ます。
うまく決まればずっと相手を抑え込む事が可能です。
以上が相半身片手取り一教(表)における残心までの流れです。
3. 相半身片手取り一教(表)上達のコツ
相半身片手取り一教(表)の上達のコツは何でしょうか。
力を入れずに相手を崩し、自分崩れないを体感するのは難しいと思う人も多いのではないでしょうか。
私も当初全く分かりませんでした。
しかし、この稽古方法をした時に少し掴めたという記憶から提案する方法があります。
それは、木刀や棒を握った状態で一連の動作をしてみる事です。
当然手の力で相手を崩そうとしている内には全く無理だと思います。
握られている手を意識するのではなく、相手の「体を崩す」為に足捌きを使っていく事に気が付けば上達は早くなると思います。
以上、合気道経験者の考える相半身片手取り一教(表)と上達のコツでした。
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