人間が、貧乏ゆすりをしたり、食事中に髪の毛を触ったり、と好ましくない癖が有る人が居るように、馬にも、好ましくない癖を身につけてしまう個体が居ます。
まぁ、あまり問題の無い癖もあれば、人間や馬自身にとっても危険な癖や、病気を誘発させてしまう癖もあります。
今回は、そのような馬が身に付けやすい悪癖について説明したいと思います。
1.退屈だから覚えてしまった悪癖
梅雨時で天気が悪い日が続いたり、怪我や体調不良で馬房から出られなかったりすると、馬は退屈します。
しかし、馬は犬や猫のようにおもちゃで遊ぶ習慣はありません。
乗馬クラブの馬房の中にあるのは、水桶と藁です。
口寂しかったりすると、きれいな藁をもぐもぐする事はありますが、一日中それをやっていられるわけじゃありません。
退屈のおかげで身についてしまう悪癖のトップは「さく癖」別名「くいっぽ」とも呼ばれています。
乗馬用の馬にも競馬用の馬にも見られる癖です。
さく癖は、馬房の扉や、窓枠などを前歯で噛みながら空気を飲み込んでしまう癖です。
前歯で対象物を噛みながら、ちょっと身体を引き空気を吸って飲み込むのです。
人間から見ると、そんなに楽しそうには見えないのですが、何もする事が無いよりは良いのでしょうか?
やっかいな事にこのさく癖は、それをやっているのを見た馬にも伝染しやすく、矯正の難しい癖です。
そして、空気を飲み込む為、食欲不振や疝痛の原因にもなります。
さく癖を防止させるには、やはり馬を退屈にさせないことです。
あとは、馬がさく癖に使う対処物に、苦いさく癖防止薬を塗ったりします。
乗馬クラブに居る他の馬がまねしないように、馬房を離すことも大切です。
さく癖と共に多い退屈ゆえに行う癖がもうひとつあります。
「熊癖」(ゆうへき)別名「ふなゆすり」と呼ばれています。
前肢を少し開き軸にして身体を左右にゆらゆらと揺らす癖です。
動物園の熊が身体をゆらゆら揺らすしぐさと似ているので熊癖と呼ばれています。
この癖は、蹄の形を悪くしたり、肢の関節にも負担がかかりよくありません。
防止するには、やはり退屈させない事が第一ですが、足枷をつけて矯正する事も出来ます。
この熊癖もさく癖同様に周囲の馬が真似しますので、馬房は離すようにしましょう。
2.人間に危険がある悪癖
馬の悪壁には、人間にとって危険なものがあります。
そのなかで一番多いのは咬癖(こうへき)と蹴癖(しゅうへき)だと思います。
咬む、蹴るという行為は馬にとっては基本的な防衛手段です。
馬が人間に対して、その防衛手段である咬む、蹴るという行為を見せると言う事は、人間を信用しておらず、敵としてみなしている事になります。
調教途中などで、人間と良い信頼関係が築けなかった事や、虐待された事が原因で表れてしまう癖です。
噛癖や蹴癖はいわば人間が作り出してしまった癖です。
信頼関係を再構築しなければ治らない癖ですので、乗馬中はもちろん、馬に接する時は常に愛情をもって接してあげてください。
3.馬にも人間にも危険な悪癖
馬にも人間にも危険な悪癖と言うと、乗馬中に表れる、起立癖や、物見癖でしょうか?
物見癖は、臆病で神経質な馬に多く、見慣れないものや、突然風が吹いても驚きます。
とても神経質な馬だと、馬場に木の葉が一枚落ちただけでも、その木の葉に警戒し大きく迂回しようとする馬も居ます。
物見癖の馬は、びっくりすると暴走をしたり、横っ飛びしたりします。
乗馬者が未熟であれば、落馬の原因にもなります、馬もびっくりして飛びのいた拍子に滑ったりすることもあります。
起立癖は、馬にも人間にとっても非常に危険な癖です。
何かに驚いてパニックを起こし暴走したついでに立ち上がったり、乗馬者を振り落とす為に起立したりと理由はいくつかあります。
起立した際にバランスを崩して転倒する危険もあり、そうなると馬も人間も怪我をする可能性があります。
起立するのも、驚きやすい馬に多いので、物見癖の延長的な部分もあるでしょう。
このような馬は、不安の対象が安全であると理解させてあげないといけません。
そして、人間が一緒に居れば大丈夫であるという安心感と信頼感を持たせてあげなくてはいけません。
悪癖を治すという作業は、根気と愛情が必要です。
悪癖や恐怖心は、人間のせいで身についてしまうものも多いので、馬に接する人は、乗るだけが乗馬ではなく、手入れをする時も、飼葉をあげる時も、馬に接している時間全てがお互いを学び理解する時間だと思ってください。
良い馬になる資質と言うのは、血統や生まれ持った能力で決まる部分もありますが、性格の良い馬になるかならないかは人間の馬に接する態度に大きく関わっている事を覚えていてください。
コメント