フラダンスはご存じのとおり、ハワイの伝統的な踊りです。
本来、『フラ』という言葉はハワイ語で『踊り』という意味なので、『フラダンス』をいう呼び方は正しくありません。(踊り踊りという意味になってしまいますね)
『フラダンス』は、フラが日本で踊られるようになってから、日本人が分かりやすいように作られた、和製英語のようなものだと思われます。
フラダンス(ここでは日本式にいきます)には、『カヒコ』と『アウアナ』の2種類があります。
カヒコは古典的、さらに宗教的な意味合いをもつ踊りです。
アウアナはハワイ語で「漂う」とか「正道をそれる」という意味があります。
正道をそれるから邪道なのかというとそうではなく、形を変えた新しい形式の踊りという考え方でよいと思います。
ここではカヒコについてお話します。
1.カヒコとは
カヒコは、神話や伝説、神々への賛歌を起源とし、古来、神前の儀式などで踊られてきました。
イプヘケ(ひょうたんを重ねて作った楽器)や、パフ・フラ(ヤシの木から作られたドラム)など打楽器の伴奏に合わせ、メレ(ハワイ語の詠唱:オリに節回しをつけたもの)に合わせて踊ります。
神前の儀式で踊られ、神や王に捧げる意味を持っていることから、昔は修業を行った男性のみが踊ることを許されていました。
今では女性も踊ることが出来ますが、衣装や身に付けるものには制約がいくつかあります。
また、カヒコは儀式の中でその形式にのっとって踊られます。
登場し整列する ⇒ オリを唱える ⇒ メレに合わせて踊る ⇒ 退場する、という流れで踊られます。
登場から整列までの踊りを「カイ」退場する時の踊りを「ホイ」といいます。
2.カヒコのステップ
カヒコとアウアナ、ステップは基本的に同じですが、一部のステップで形が違う場合があります。
カホロの4歩目の足を後ろに蹴る踏み方や、ヘラで前に出す足を90度に開く踏み方などです。
ただ、どんな形でも共通していると言えるのは、カヒコはほとんどのステップを「ベタ足」で踊ることです。
「ベタ足」(`aiha`aスタイルといいます)とは、足の裏全体を地面につけて踏みこむ踊り方です。
古来フラカヒコは砂浜や地面の上で踊られていたので、足の裏全体でしっかりと地面をとらえることが必要だったのです。
カヒコのステップやハンドモーションは、アウアナと比べて直線的、鋭角的で、シンプルですが力強く荘厳なイメージを抱かせます。
打楽器の響きと朗々と詠いあげるメレに合わせて、何十人ものダンサーがぴったりとシンクロした動きで踊るカヒコは圧巻です。
3.カヒコの衣装
色とりどりの花柄や、美しい光沢のある生地で作られたドレスなどで踊るアウアナと比べ、カヒコの衣装は極めてシンプルなものです。
カヒコは神聖で厳粛な踊りであるため、華美なものは使われません。
貴金属のアクセサリーを身に付けることもできませんし、化粧もしません。
神事にふさわしいものとして、自然なもの、人工的でないものを身に付けて踊ります。
例えば、ティーリーフというハワイに自生している植物の細長い葉を、100枚から200枚集めて作られたスカートや、カパという木の皮を使ったスカート、自然の素材で染められた布地を使ったスカートやブラウスなどを使います。
レイなども、自然からマナ(霊力)を引き出すために自分の力で作るものという考えがあり、身の回りでとれた植物を材料にします。
ティーリーフやシダの葉などが主な材料になります。
頭につけるレイを「レイ・ポオ」、手首と足首につける飾りを「レイ・クーペエ」といいます。
4.まとめ
神に捧げる神聖な踊りであるフラカヒコは、宗教儀式の一部として大切な役割を果たしていました。
また、文字を持たなかった先史時代のハワイでは、フラダンスは歴史と文化の伝承という重要な役割も担っていました。
チャント(詩詠、歌詞のような意味)の意味を体現する踊りだったフラダンスは、その手の動きでチャントの内容である、太陽や月、雨や風、木々や花、波の動き、人々の生活のさまなどを表現しています。
まるで、踊り自体が一つの物語を語っているようです。
ハワイの人々はチャントやフラダンスによって、歴史や文化、それを守る人々の思いなどを、後世に伝えようとしてきたのです。
そんな重要な役割を担っているフラダンス。私たち日本人が、「ハワイの歴史と文化を伝承する」だとか「神々をたたえる」とか、そういうものを背負って踊るのは・・・ちょっとおこがましいというか何というか、ある意味重荷にさえ感じます。
だから私はカヒコを踊る時はいつも、ハワイという異国の文化に触れさせてもらい、それを少しでも理解しよう、私に出来る範囲でそれを伝えようという謙虚な気持ちでいます。
それはカヒコに限らず、フラダンスの上達への大切な道だと考えています。
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