テコンドーの代名詞といえばダイナミックな踵落とし。真上に振り上げた足を脳天目がけて振り下ろす斧のような一撃は見た目の派手さだけでなく相手を倒しうる必殺の武器です。
華麗で鮮やかな踵落としも練習を重ねれば必ず習得できます。さあ、貴方も身に付けてみませんか。
1. 踵落としの基本的な蹴り方とポイント
踵落としは縦に高く振り上げた足を相手の脳天や鎖骨に振り下ろすインパクトある大技です。いきなりだしてもなかなか当りませんが、フェイントや繋ぎ技、連続攻撃のフィニッシュとして仕掛けると非常に使い勝手がよくなります。
今回は踵落としの練習方法と体の硬い人でも蹴れるようなコツを解説します。
1. まずは縦の柔軟性を養う
踵落としは他の蹴り技以上に縦方向の柔軟性が要求される蹴り技です。太腿の鼠径部(付け根)とハムストリングスの柔軟性が鍵を握っているといっても過言ではないでしょう。
理想は前後開脚ができるようになる事ですが、初心者の方がいきなり取り組もうとすると肉離れのような怪我をしやすいため注意が必要です。私自身、十分な柔軟性のないまま前後開脚から行ったことでハムストリングスの断裂という怪我をしてしまった経験があります。
そのため、太腿の鼠径部とハムストリングスのストレッチに分けて少しずつ伸ばしていく手法をお勧めします。
具体的なやり方としてまずは太腿の鼠径部のストレッチから解説します。
まず片方の足を前に出して膝を曲げ、もう片方の後ろ足は膝から足の甲までを床に付けます。この時、足の位置は一直線になるように前後をそろえましょう。
上記の姿勢を整えたら前側に重心を乗せていきます。太腿の付け根がじわーっと伸びていく感覚があればきちんとできている証拠です。そのまま太腿の前側を地面に付けていくようなイメージでゆっくり伸ばしていきましょう。鼠径部のストレッチは以上です。
次にハムストリングスのストレッチ。ここでは「種類がたくさんありすぎて何をやったらわからない」と迷われる方のために手始めに取り組みやすいメニューを紹介します。
片方の足を前に出し、反対側の膝を曲げて伸ばしている方の足の腿の下に入れます。その状態から上半身を床に付けるように前に倒していきます。こうすると力みが抜けてより伸ばしやすくなるため、初めのうちは左右の足で「逆4の字」を描くようなストレッチを行いましょう。
2.足でmの字を描く
踵落としは内廻しと外廻しの2パターンの蹴り方があります。状況に応じてどちらでも使い分けられるような練習方法としてパートナーと2人1組で行う練習方法を上げておきましょう。
二人一組で向かい合い、パートナーは腕、もしくはミットを肩の高さに構えます。蹴る側は内廻しの踵落としでパートナーの腕を飛び越えるように蹴ります。蹴った足を地面に下ろさず、すぐに外廻しの踵落としに繋げてパートナーの腕を乗り越えるように蹴ります。
地面に蹴り足を下ろさずに膝から上げるようにリードするのがポイントで丁度足で「m」の字を描くようなイメージで行うとリズムよくスムーズにできるでしょう。
身体の硬い人の場合は、上体をやや後ろに下げる事と膝を高くあげる事を意識してこの練習に取り組んで下さい。蹴り足側の骨盤と膝の位置を高く持ち上がるため、蹴りの高さを養うトレーニングにもなります。このトレーニングを繰り返していくうちに体の堅い人でも踵落としを蹴る事ができるようになりますので道場での自主練習に取り入れてみて下さい。
2. 踵落としの実戦運用
さて、上記では踵落としの練習方法について説明しましたが、今度は実際に試合で使うためのポイントについて説明します。
ダイナミックな大技ながら連続攻撃のフィニッシュや繋ぎ技として使い勝手のいい蹴りなので、実際の使い方を学んでいきましょう。
1. 前足の蹴りで突き飛ばしてから蹴る
踵落としはモーションが大きくいきなり出してもなかなか当りません。
そこで私は前足の横蹴りや前蹴りで相手を突き飛ばしてバランスが崩れている間を狙って蹴る事で命中率を上げています。
ポイントは相手の蹴りに自分の中段を合わせて崩す点です。片足立ちになっている状態で直線系の押し飛ばす蹴りを受けてしまうとバランスを大きく崩します。その間はバランスを保つためにガードも下がり、とっさの攻撃にも対応できなくなりますので上段を蹴るための絶好のチャンスとなるでしょう。
相手のバランスが崩れている間に縦の蹴りである踵落としを当てると相手は避けられずにもらってしまうわけです。この時蹴り足は前足でも後ろ足でも構いません。状況に応じて蹴りやすい足で踵落としを決めましょう。
2. 視界の外から攻める
組手試合での重要な要素の1つに「相手の視界の外から攻める」テクニックがあります。組手の最中というものは緊張やプレッシャーでどうしても視野が狭くなりやすく、特に攻撃的なタイプの選手ほど視野が集中しがちです。
こうしたファイタータイプの相手にこそ視界の外から飛んでくる踵落としは有効です。
まずは自分の狙いたい方の蹴りとは逆側から攻めていきます。右で蹴るなら左から、左で蹴るなら右からといった具合に対角線の攻撃を振っておくことで相手の防御意識を逆側に固めさせます。
例として左の前廻し蹴りから攻めるやり方を上げておきましょう。この蹴りは相手に当たらなくても構いません。事前に左の蹴りを放っておくことで相手の意識は正面、もしくは右側に集中します。
すかさず死角となる背中側から右足を振り上げて外廻しの踵落としを上段に向かって蹴り込みます。コツは「相手の左肩にぶつからないように蹴り足をコントロール」することです。
背中側は視界が狭く、攻撃を防ぎにくいため大技でも非常に当てやすくなります。
以上がテコンドーにおける踵落としの練習方法とコツ、試合で実際に使うためのポイントです。派手でダイナミックな技も工夫と練習次第で使い勝手が格段に向上します。私には無理とあきらめず、地道に練習すれば必ず上達します。
ご清聴ありがとうございました。
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