後ろ押し蹴りは後ろ蹴りに「押し飛ばす」要素を加えた蹴り方で、遠い間合いから回転のパワーを使って相手を押し飛ばしたい時に使います。
テコンドーでは遠い間合いをキープする戦術が多いのでプレッシャーをかけて間合いを潰したいときにも有効です。
今回は後ろ押し蹴りの練習方法と上達のためのコツを解説します。
1. 後ろ押し蹴りの基本的な蹴り方とポイント
後ろ押し蹴りの特徴は後ろ蹴りが踵の一点で鋭く急所を抉る「点の攻撃」であるのに対して、足の裏全体で相手を捉える「面の攻撃」であることです。
相手に圧力をかけ、ガードごと吹っ飛ばすような戦い方に適しています。
K-1ではテコンドー出身のキックボクサー、セルカン・イルマッツ選手が魔裟斗選手に対して後ろ押し蹴りを使ってコーナーに押し返していましたね。
後ろ蹴りに「相手を吹っ飛ばす」付加価値を与えたものが後ろ押し蹴りであると言えるでしょう。
今回は後ろ押し蹴りの練習方法と上達のためのコツを解説します。
1.後ろ押し蹴りは横蹴りを回転して蹴る
後ろ押し蹴りは後ろ蹴りよりも遠い間合いから蹴るケースが多いです。
後ろ蹴りは接近戦での攻防の中で、コンパクトにダメージを与える蹴り方をしますが、後ろ押し蹴りは比較的広い間合いから、相手を追い詰めるように蹴っていきます。
イメージとしては「軸足をスライドさせて、横蹴りを回転して蹴る」イメージです。
ただし、実際の横蹴りのように膝を横に大きく抱え込むと相手から見えて避けられますし、捌かれてカウンターをもらいます。
あくまでも「蹴り方は後ろ蹴りをベースに」しましょう。
後ろ押し蹴りの上達のために有効な練習方法として、「キックミットをもったパートナーを道場の端まで押し飛ばす」練習方法があります。
この練習方法はまず、キックミットをパートナーに持ってもらい、後ろ蹴りよりもやや遠い間合いに立ってもらいます。
次に構えてもらったミットを蹴るのですが、この時重要なのは「回転しながら遠い間合いからスライドする」「相手の背中まで蹴りを貫通させるイメージで蹴り抜く」の2点です。
回転しながら前に軸足をスライドさせることで、遠い間合いの相手に蹴りが届きますし、軸足の推進力が相手を吹っ飛ばすほどのエネルギーになります。
やりにくいという人は廻し蹴りや横蹴りをスライドしながら蹴る事から始めましょう。
回転技は背中から回るので、まずは基本的な蹴り技でスライドの感覚を掴む事がベストです。
また、蹴り足の推進力で蹴りを伸ばすのですが「相手の身体を背中までぶち抜く」イメージで蹴りましょう。
軸足が伸びきるタイミングよりも早く目標にあたるので、当たったところから蹴り足を延ばすと回転によるエネルギーが加算されて貫通力を生み出すため、多少ガードされてもガード越しに相手を崩すだけの威力を秘めています。
目標から目を離さず、槍のように真っすぐ突き出しましょう。これだけで命中率もかなり上がります。
2. 後ろ押し蹴りの実戦運用
さて、上記では後ろ押し蹴りの基本と上達のコツについて説明しましたが、今度は実際に試合で使うためのポイントについて説明します。
後ろ押し蹴りは遠い間合いから相手を追い込むのがベストな使い方です。
では解説します。
1横蹴りよりも遠い間合いから奇襲を掛ける
後ろ押し蹴りは大技であるため、相手にいきなり出してもまず当りません。
そこで、相手の油断をついて当てる戦法が有効です。
例えば横蹴りより遠い間合い。
相手が「この間合なら来ないだろう」と油断しているときにこそ後ろ押し蹴りは有効です。
テコンドー特有の遠い間合いから横蹴りのモーションを何度か見せておき、「この距離なら仕掛けてこないな」と相手に思わせます。
その瞬間、蹴り足を下ろし、軸足をスライドさせながら回転して中段へ深く蹴り込むのです。
横蹴りや上段廻し蹴りを印象つけることによって相手の距離を狂わせるだけでなく、下ろした瞬間を狙ってに前に出てくる相手もいるので、前に出ようとしたタイミングで吹っ飛ばしましょう。
以上がテコンドーにおける後ろ押し蹴りの練習方法と上達のコツ、試合で実際に使うためのポイントです。面の攻撃であるとはいえ、回転と軸足のスライドによるパワーが加わるので必殺の一撃にもなり得ます。遠距離から相手を押し出して試合を有利に運びましょう。ご清聴ありがとうございました。
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