弓道が上達する練習方法のキービジュアル

1.弓道の最終目標「真善美」

弓道における最終目標は「真善美」と言われています。
正しい、つまり「真」の動作をすれば必ず中る(あたる)ということであり、心を静かに「善」くすること、その2つができていれば自然と「美」しい射型ができているのです。

「高校弓道では中ればいい」とよく耳にしますが、やはり美しい形でなければ皆中は不可能だといえます。
県大会などでほかの生徒をよく観察していましたが、強豪校は射型はもちろん、射場に入ってからの体配(たいはい)や、道着の着方も美しいです。

「真善美」に関しては弓道連盟のHPやほかの有段者などに聞いて理解を深めるのもよいでしょう。
各都道府県によって試験の内容は違いますが、参段の昇段審査の筆記試験で「弓道における最終目標はなにか」という題目を出されていたのを見たことがあるので、さらなる高みを目指す人は理解していたほうがよいでしょう。

2.弓道の基本動作「射法八節」

弓道の基本動作である「射法八節」は1.足踏み、2.胴造り、3.弓構え、4.打起し、5.引き分け、6.会、7.離れ、8.残身です。

正面打起しの場合は打起しと引き分けの間に「大三」と呼ばれる動作が入ります。
どの動作においても体の軸がぶれないことが大切です。

よく体の十文字を、三重十文字を意識すると説明がありますが、簡単に言えば斜めに立ったり片側に体が曲がったりせず、まっすぐ立つということです。
ここではわかりやすく「射法八節」における動作と注意点をご紹介します。

1.足踏み

「足踏み」とは射場に入り、的に向かって足を開く動作のことです。
本座と呼ばれる位置から的に向かって足を進め、まず左足を置きその左足に一度右足をつけて閉じ、右足を左足から離して立ちます。
このとき開く足の幅は個人によって違います。
実際に弓を引いた時の矢の長さの矢束と同じである、身長の半分であるなど、さまざまに言われていますが、調整して足の踏ん張りがきく長さを体に覚えさせる必要があります。

足踏みした時の足の角度は、60度です。
左右の親指とかかとをそれぞれ線で結び、延長線が60度に交わるようにします。
また左右の足の位置は的に対してまっすぐ開けるようにしましょう。
的の中心から射場まで線を引き、その線に親指を合わせて立つというイメージです。
床の木目や板の隙間を利用すると覚えやすいですが、射場によっては床材が異なり、足踏みの基準となるラインがないこともあるかもしれません。

また左右の足どちらかが前に出るなどしてしまえば、的に対しての体そのものの角度が変わってしまい、いつも通りにしているつもりなのになぜか的に中らない原因にもなってしまいます。

射型がきれいでも足の位置が違えば狙いも変わってくるので、いつも同じように足踏みができるよう体に覚えさせましょう。

2.胴造り

「胴造り」は弓に矢を装着した後、弓の下側に弦輪をかける部分である本弭(もとはず)を左膝に置き、右手を右の腰に付ける動作です。

このときへその下にある丹田(たんでん)という部分に集中し、最後まで気を抜かないことで揺らがない上半身にします。
実際に練習するときには胴造りをした状態で、前や後ろから軽く肩を押したり引っ張ったりしてもらうと鍛えやすいです。

3.弓構え

ゆがけ(弽)の親指に弦を引っ掛け、矢筈(やはず)を所定の位置にセットすることを「番える(つがえる)」と言います。

番えてから手の内を整え、そのまま物見を定めた状態が「弓構え」です。

左右の腕は大木を抱えるようなイメージで肘を軽く曲げ、目線は矢筈、末弭(うらはず)、本弭、矢筈、矢に沿ってそのまま的に顔を向けます。

物見を定めるために顔を左に向ける動作は最初はなかなか慣れませんが、しっかりと顔が向けられるようにしましょう。
中途半端な角度にしているとほほが弓と弦の間に入り、離れをした際に当たる可能性があるのでとても危険です。

4.打起し

「打起し」は床に対して垂直になるよう、まっすぐにしたまま弓を上にあげる動作です。

弓が体にもたれかかるように斜めにならないよう気を付けてください。
このとき息を吸いながら上げ、上がりきったときに吐くとちょうどよい加減で力を抜くことができます。
あまり息を頑張って吸いすぎると肩まで上がってしまい不格好になってしまうため、肩はなるべく落とすように意識しましょう。

5.引き分け

打起しした後は左右に引き分けていきます。
正面打起しの場合は「大三(だいさん)」をします。
打起した後に矢の3分の1ほどを開く動作です。

引くことは意識せず、馬手(右手)はゆがけの紐を巻き付けた部分が打起し時より少し流れて頭上に来るように、弓手(左手)だけをまっすぐに伸ばすようにします。
羽根まで含めた矢の長さの半分くらいで意識すると矢と床が平行になってきれいに見えます。

大三の後、「引き分け」です。
左右の腕を均等に引き分けましょう。
弓手を下ろすのが遅く矢先が上がってしまうと矢がこぼれて落ちてしまう原因にもなるので、矢先が上がる場合は矢先が下に向くように意識してください。

6.会

引き分けをして矢が唇の部分まで来たら「会」です。
矢が唇より下になると上方向に飛び、上になると下方向になったりして狙いが定まらないので、毎回唇に重なるよう調節しましょう。

会に入ったら狙いを定めるのですが、左右の腕は残身の瞬間まで伸ばし続けてください。
狙うことに気を取られると自然と腕が縮まってきます。
初心者は矢が的まで届かないことがよくあるのですが、会の時にしっかりと伸びることを意識すると的まで届くようになります。

的に当てることだけを意識してしまうと胴造りのときに固めておいた体が崩れることが多いです。
尻を突き出していたり(出尻)、胸が張り出していたり(鳩胸)、右ひじが下に落ちて体そのものが歪んでいたりと、美しいとは到底言えません。

力任せに引きすぎてしまうのもNGです。
左右の腕の力の具合は左:右が7:3と言われています。
引き分けも会も、引きすぎないことが美しく引くためのポイントです。

7.離れ

狙いが定まり十分に気が熟すと「離れ」が起きます。
肝要なのは「離す」ではなく「離れる」ということです。
つまり意図的に行うのではなく自然に起こるものと理解したほうが早いです。

自然で美しい離れをすることが理想ですが、馬手が前に離れてしまう「前離れ」や下方向に離れる「すくい離れ」があります。

前離れは馬手のゆるみが原因です。
大三で弦をひねることで弦と矢とゆがけを固定し、一体感を生み出して安心して引けるようになるのですが、前離れではひねりが足りないか緩むかすることで起こります。
通常は正面から見た時、馬手の小指と薬指が見えるのですが前離れでは手の甲が見えているので、ほかの人に見てもらうか自分で動画を撮影するかで確認することができます。

すくい離れはその名の通りすくうように離れることです。
原因は骨格や癖にあるといわれています。
治し方はとにかく意識することです。

8.残身

離れのあと、残身です。
矢が離れた状態をしばらく保ち、飛んだ矢の位置や自分の姿を把握してから弓倒し、物見を戻します
残身は今行った射法八節を反省するための時間・型でもあります。

3.弓道上達のための4つのポイント

3-1.利き目を把握する

右か左か、人によって利き目は変わってきます。
目の前に指を一本立て、それを右と左の目で交互に見てみましょう。
両目で見ていた位置と同じ目が利き目です。
基準となる点などに重なるように指を出してみるとわかりやすいです。

自分の利き目を把握することにより一般的に教えられている見方で的を狙うか、そうでないかが変わってきます。
一般的な「ねらい」は弓の左側に的の半分が見える状態ですが、利き目が左で「前の的に狙うと中る」という人もいました。
指南されたとおりに狙っているはずであるのにまっすぐ飛ばないという人は、ねらい方を見直す必要もあるかと思います。

利き目を把握することは射場を整備するうえでも大切なことです。
射場には的の延長線上になるよう目印となる板があります。
この板は立ち順の「大前」「二番」…「落」までありますが、的を設置するのも板を置くのも学生・社会人関係なく道場に早く到着した人が行います。
まっすぐ的に向かえるよう目印となる板ですが、自分の利き目で合わせて設置するのでもし間違えると多くの人に迷惑がかかることになります。




実際に大会が行われた道場で、目が不自由ではあるけれども射型が整っているので的に中てるこができるという方が参加されたのですが、その目印の板の位置が間違っていたために的に中らず、立(たち)を中断して板を直さなければならないことがありました。

自分のためにも、人に迷惑をかけないためにも利き目は把握しておきましょう。

3-2.猿腕の改善

両手を合わせて伸ばしたとき、肘の内側が真上を向いている腕のことを「猿腕」と呼びます。
両手小指を合わせたときに手首から肘までがくっついている人も猿腕です。
腕のゆがみが原因でダンスなどをするときの見栄えに影響するようですが、弓道では力がうまく入らなかったり、けがの原因にもなります。

猿腕のまま矢を引くと、離れの際に弦が腕に当たりけがをしてしまいます。
はじめは打ち身程度なのですが、弓のキロ数を挙げていくとそれだけ衝撃も強くなるので、見るに堪えない色になることもあります。

猿腕の直し方としてはまず手を外側にした状態で壁や柱に手を付けます。
このとき肘の裏が見えている状態なので、ぐっと力を入れて肘の裏が真上から見て見えないようにします。
このように教えられてきましたが、かなり荒技だと思います。
猿腕が気になる方はいろいろな方法があるようなので自分に合った方法を調べましょう。

3-3.手の内を固定させる

矢をまっすぐに飛ばすために、手の内はかなり重要です。
また正しい手のうちであれば自然と弓返りが起こります。

射法八節の弓構えで手の内を作ります。
弓の左側を天文筋に合わせて置き、中指・薬指・小指の爪の先は揃え中指の上に親指を添えます。
天文筋は手のひらにあるシワを目安にするとうまく合います。
打起しをした後の大三で手の方向は変わりますが、このとき弓に巻いている皮が原因で滑ったり摩擦が強かったりすることもあるので、そのような場合はすべり粉などで調整しましょう。

3-4.角見をきかせる

会に入りねらいを定める際、重要になってくるのは手の内だけではなく、「角見」(つのみ)をきかせることも重要です。
角見とは親指の付け根部分のことで、角見をきかせるとは親指の付け根部分で弓を上手に押すということです。

角見をきかせるために弓手の状態や角度も重要になってきます。
自分から見て弓手の人差し指と親指、腕がYの字になるよう意識します。
また横から見た際に手首が折れ曲がったようにならないよう、親指の付け根から腕にかけて板を敷いているようにまっすぐにすると上手に力が入ります。
これができていないと手首に力が入らず、親指の付け根ではなくその下の筋肉部分で押していることになります。
そのまま離れをすると弓返りもしないので手首への衝撃が大きく、痛めてしまう原因にもなるので角見をきかせるよう普段の練習から意識しましょう。

4.道具の手入れ

安全に弓道を行うために道具の手入れはできているでしょうか。

4-1.弦輪

弦の購入後、末に取り付ける弦輪は自分で作ります。
しっかりと締めなければ弭徐々にゆるみが生じ、ひどければ弦で弓が削れます。
弦輪を作るときは三頭を作る際にできる限り引っ張ると固定できます。

まず弦の先端を十分にほぐします。
輪を作り、下から輪の中へ通します。
そのあと先ほど通した弦に×印に重なるようにして三頭を作り、弦の先端と輪を持ってできる限り引っ張ります。
先端を下から輪へ通し、輪の右側にぐるぐると巻き付けて完成です。
出来上がったら弦を張り、中仕掛けと握との距離が15㎝になるまで弦輪を作り直して調整します。

弦は使用するたびに伸びるので、はじめは輪を作る位置を長めに取り、作り直すごとに弦全体が短くなるよう輪の位置を変えること、末弭の大きさに合うように弦輪を作ることが大切です。

4-2.中仕掛け

矢を弦に取り付ける部分は麻などを巻いた中仕掛けといいます。
何度も使用していれば中仕掛けが細くなり、矢筈にかみ合わなくなるので修繕が必要です。
修繕のための道具一式は学校が用意してくれる場合もありますが、社会人であれば各地域の弓道場で引くことになり、中仕掛けが乾くまで道場にいるわけにもいかないので自宅で修繕する必要があります。
社会人であれば道具一式は個人で持つことが好ましいです。

中仕掛けがついている場合はカッターやハサミで削り取り、丁字の的中定規で矢筈を取り付ける部分にマジックなどで印をつけます。
その印を目印にして中仕掛けを作ります。
印から上下3:7や1:3など、好みで巻き付けますが、全体は7㎝ほどです。
麻を巻く範囲に印をつけてボンドを塗り、麻にもボンドをつけて巻きます。
上部から巻いていくのですが、麻の端を少しに巻きつけてから上から時計回りに巻いていくことで麻が取れにくくなります。
道宝と呼ばれる木の板で十分に巻いて好みの太さに巻いたら完全に乾くまで放置し、固まったら完成です。
的中定規で矢筈をつける部分に印をつけ、何度も筈をつけたり外したりして太さを調整するとよいです。

4-3.ゆがけ

弓を引いているときに右手が思うように動かないときは、ゆがけが硬くなっているかもしれません。
ゆがけは鹿の皮を使用し、一人ひとりの手形に合わせオーダーメイドで作られます。
出来上がったゆがけの手首部分が硬いことが多く、引き分けの際に腕を圧迫し違和感を覚えることがあるようです。
硬い場合はやわらかくなるまで手でもみほぐしましょう。

5.弓道上達のために自宅でもできる練習方法

「ゴム弓」は左手で持つ握の部分だけを残して上部または両端にゴムをつけたものです。
全くの初心者が主に射型の練習用に使用しますが、自宅での練習でも十分に役に立ちます。ゴム弓がなければ百円均一やホームセンターで売っているゴムバンドも使えます。
ひたすら射法八節を繰り返すことで射型を安定させることと、強のゴムバンドを使用したり長さを変えるなどして負荷をかければ腕の力をつけることもできます。

そのほかにも硬貨を使った方法があります。
弓構えの状態で両手親指の付け根に硬貨を乗せ、そのまま会まで落とさないようにする方法です。
硬貨を落とさないよう水平にゆっくりと移動させることで実際に弓を引くときに矢が水平になるようになり、角見をきかせる弓手の角度も無意識のうちにできるようになります。

6.社会人になってからの弓道の練習法

社会人になってから弓道を始める人は、各地域にある弓道場とその利用方法、利用するための登録方法などを調べておく必要があります。
弓道場によっては年度のはじめなどに初心者向けの講習会を開催することもあります。
未経験者が気軽に弓道に触れられるよい機会なので、参加してみることもよいと思います。
弓道場の雰囲気を見てみたいという人は、県の弓道場など大きな施設では一般の人も安全に見られるよう観覧席が設けてあったり、2階部分(または地上1階)がガラス張りになっていて上から見ることができる造りになっているところもあるので、まずは一度弓道場を見学することをお勧めします。

地域の弓道場には学校のように部活の顧問やコーチが指導してくれるわけではありません。
自身の練習を目的とせず、指導に当たる先生もいらっしゃいますが、指導することを専門として弓道場に常駐している人はいないと考えましょう。

弓道場に通う人は学校で弓道部に入っている生徒から会社務めをしながら練習に来ている一般人です。
そのような環境で一から弓道を始めるという人は、登録時にお世話になった弓道場の管理者に頼ると練習時に面倒を見てくれる人を何人か紹介してくれることもあります。
紹介してもらった人の名前と顔を覚えておき、射場に入る前のゆがけを装着しているときや休憩中に声をかけてお願いすると手が空いた時に指導してくれます。
練習時間を割いて指導をしてもらっていることを忘れず、真摯に取り組みましょう。

道具を持っていない場合、弓と矢は余っているものを貸し出ししてくれる場合もあります。
練習を重ねて腕の力が付き、ある程度弓のキロ数が定まってきたら自分で購入しましょう。
ゆがけと矢は手のひらの形状や腕の長さによって個々で違うので、早い段階で用意しておく必要があります。

7.弓道が上達する練習方法のまとめ

技術を求めることだけではない奥深い弓道は、一朝一夕で会得することも理解することもできないでしょう。
各道場で指導をされている先生方の射癖などに対するコメントも見ましたが、意見がさまざまに分かれており、先生方それぞれが解釈をお持ちでいらっしゃることがわかります。

弓道で用いられる弓は他国のものとは違い、照準器もなく実にシンプルな構造をしています。
シンプルだからこそ奥が深く、正解は1つのように見えて1つではありません。
弓道は命中だけを求める弓術とは違います。
中てることだけでなくそのほかの所作などの美しさを求めることが必要となってきます。
上達するためにはひたすら美しさを求めて練習を重ねることです。




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