ボクサーの減量と言えば、水も飲めないような、自分の体を極限まで追い込むイメージがあると思います。漫画「あしたのジョー」の力石を思い出す方もいるかもしれません。

ボクサーは自分が戦う階級に体重を合わせるため、「減量」を行います。では、そのやり方を見ていきましょう

1.そもそも減量はなぜ必要か

減量で思い出されるのが、先日の比嘉大悟選手。フライ級の体重に合わせる事が出来ず、試合には負け、無期限の出場資格停止という処分をくだされてしまいました。

体重を守れない選手はプロ失格、という事です。

趣味で始めるのであれば全く別ですが、ボクシングは頭部に衝撃を受ける危険なスポーツです。だからこそ、そのパンチの威力を左右する体重には厳重な管理が必要なのです。

きつい減量をして自分が戦う階級に合わせ、試合に出る。完全にボクシング界では当たり前の話ですが、ではなぜ自分の普段の体重で戦わないのか、という事に疑問を抱く方も多いと思います。

先に申し上げると、体格が大きい方が有利だからです。
体格が大きい方がパンチも強いですし、防御の耐久性も上がります。

例えば、通常体重が65kgの選手と、60kgの選手が、60kgを上限体重として戦うとします。
5kg落した選手と、そのままの選手、試合当日どちらのパワーが強いかというと、65kgの方です。

65kgの選手の方は、60kgの選手に比べて5kg分骨格も大きくパワーもあり、何より前日計量後65kgまでリバウンドが楽にできてしまうからです。

しかし、もしこの二人が55kgの契約で戦った場合、そうとは限りません。60kgの選手は5kgの減量、65kgの選手の方は10kgの減量を強いられます。要はバランスですね。自分のパフォーマンスが保てる限界まで減量出来ればいいと思います。

よく言われるのが、通常体重の10%位まで落とすのがベストということ。例えば60kgであれば、約6kg落した54kgが体も軽く、そこまで無理もないといった具合です。

10kgも落とした選手がいいパフォーマンスが出来るかといえば、そうとは限りません。この前の比嘉選手を見れば明白ですね。

自分が動けるギリギリのところまで体重を落して体格の利を手に入れ、試合当日のリカバリーでより優位に立つのが理想です。前日計量から、試合の次の日まで10kg増える選手だっています。特に中南米の選手は、そういう選手が多いらしいです。

ちなみにIBFというボクシング団体は、前日だけではなく当日も計量を行い、より体重の公平さを保とうとしています。

2.減量の上手なやり方

多くのボクサーは、試合の約1ヶ月前から減量をスタートします。いきなり食べる量を減らすのではなく、徐々に減らします。

最も変わるのは、食べる内容ですね。多いのが「高タンパク低カロリー」です。
これはもう最近の健康志向でよく聞く言葉だと思います。

タンパク質は人間の三大栄養素の内の一つ。他二つは脂質と糖質です。「三大」なので全部重要なのですが、どれが一番かと言われれば、やはりタンパク質ですね。

髪の毛、皮膚などを作る重要な要素であり、減量中であっても初期は積極的に取ってよい栄養の部類に入ります。タンパク質は必要な分だけ体に吸収され、要らない分は便として排出されます、ですのでそこまで体重増加の心配はありません。

筋肉もタンパク質で出来ているので、これは減量中だろうとなかろうと、積極的に摂取するのがよいです。運動をしたあと、40分以内にたんぱく質を口に出来れば、壊された筋線維の回復も早く、パワーアップに繋がります。

鳥のササミ、納豆、卵、めかぶ、サラダ、豆腐がメジャーどころです。減量開始の1ヶ月前から、大体1週間前くらいまで、自分の体重と相談しながら量を決め、これら食材をとっていきます。




いきなり量を減らすというのは、ジムワークにも支障が出るのでお薦めできません。たしかに減量中はジムに行くのも億劫になり、パフォーマンスも低下します。

もちろん食べ過ぎはだめですが、減量開始初期であれば、上記食材は積極的に取っていい部類のものです。

炭水化物の摂取も重要です。

炭水化物は糖質と食物繊維によって構成されています。この糖質は最近何かと悪者にされがちですが、すぐエネルギーになってくれるので、スパーリング等強度の高い練習の前は口にした方がいいでしょう。

人にもよりますが、大体4時間前が目安です。

ただ、余分な糖質はタンパク質と違い排出されにくく、体に溜まり脂肪になりやすいので、取りすぎは禁物です。あまりに体内に糖質がたまりすぎると、体も拒否反応を起こし、排出作業を行います。それが糖尿病というものです。

食べ物自体の重さも注意です。

例えば、一回の練習で1.5kg減ったとします。その減った分を上まらないように、食事量を調整していきます。

減量も佳境に入ると、一回の練習やロードワークで流れる汗も減り、体重は落ちにくくなり、故に食事量も減っていくのです。計量一週間前程度になると、食べる量を極端に減らす事が多いです。

こうなると、脂質が低下するので、肌がカサカサになったり体の免疫力が低下してきます。

減量中のボクサーはよくマスクをしていますが、弱った体を少しでもウィルスから守るための措置なんです。極限まで食事量を減らし、削る脂肪がないとき、減量の終盤に行うのが水抜きです。

3.減量とダイエットは違う

減量とダイエット、この二つは似て非なるものです。ボクサーの減量とは、勝つために自分の有利な階級まで体重を落とす事。そのためには、体脂肪3%になるなど危険水域に入ってしまうボクサーもいます。

ダイエットにおいて、体重はあくまでも目安であり、最終目的ではありません。ダイエットの目的は見た目を変える事ですね。

高たんぱく低カロリーの食事生活ならまだ真似してみてもいいですが、健康に害を及ぼす危険性のある水抜きなどは参考にしない方がいいでしょう。

水抜きは、その名の通り体内の水分を減らす作業です。

体の70%は水です。そして、2%水分量が減るだけでも目眩や吐き気などの症状が出てきます。いわゆる脱水症状というやつです。

当たり前ですが、減量中は様々な物が食べたくなります。それらを我慢しても、どうしても取りたくなってしまうのが、水分なのです。

体が欲しているからです。好き嫌いではありません。減量終盤の水抜きで体の水分量が少ない時、シャワーの時ですら気をつけないといけません。皮膚から水分が吸収され、体重が増えてしまうからです。体にクリームを塗り、その吸収を和らげるといった措置を取ります。

体が欲しているので、水抜きはつらいです。普通の人が一日水分を全く取らないのですら我慢出来る人は多くないでしょう。

ボクサーでもなるべくこの水抜きはしない方が良いです。減量の最終手段ですね。自分がどの程度まで体重を落とせるのか、ということは1回減量をやってはじめて分かり、その減量のつらさがどのように試合に響いてくるのかも、やってみないと分かりません。

故にボクサーは、自分の経験から何日前に減量をスタートするなど、自分の中でルールを作っています。体重が予定よりも早く落ちれば、減量期の通常よりも食べる量を増やしたり、自身で調整するのです。

減量に必要なのは、何といっても計画性です。それがないと、無理な水抜きなどで、試合当日のパフォーマンス低下につながってしまうのです。

減量には、ボクサーにとっては避けては通れない作業のひとつ。SNSなどで日々の減量の様子をアップしている選手もいるので、参考にしてみるのもいいでしょう。




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